成功させよう!『技能五輪』
2004.7.12

 今、静岡県は、「浜名湖花博」で燃えています。もうすでに入場者が300万人を突破して、目標の500万人の達成は間違いないでしょう。

 そこで、少し早いのですが、“ポスト花博”、次の静岡県の国際的なビッグなイベントは何かと考えてみますと、それは、3年後の2007年に予定されている「ユニバーサル技能五輪国際大会」があります。
 この技能五輪は花博のような華やかさはありませんが、世界の技能士の先鋭が一同に会し、技と力を競い合う、モノづくりの最高レベルの国際大会です。
 スポーツの祭典と違って、2年に一度開催され、昨年はスイスで行われ、来年はフィンランドで、そして、次の第39回大会が日本で、静岡県沼津市で開催されるのです。

 一方、障害者の自立と国際親善を図ることを目的とした、「第7回国際アビリンピック」は、静岡市で開催予定です。※アビリンピックとは、abilityとOiympicの合成語で全国身体障害者技能競技大会のことです。 
 私自身も看板塗装工で技能士の端くれですし、早くからこの問題に取り組んできましたので、この技能五輪がどのような意味を持つのか、また、日本の技能を取り巻く課題は何か、について述べてみたいと思います

 本来、日本人は手先が器用の上に、真面目で、創意工夫に優れていました。
 しかも、ハングリー精神が旺盛で、忍耐強く、職人気質に富んでいました。
 特に、日本が高度経済成長を成し遂げた、その源泉は、自動車やコンピューターに代表される科学技術の進歩と、それと一体となった人の技、「技能」の発達であります。
 その歴史は、「技能五輪」におけるトップレベルの日本選手の輝かしい成績が物語っています。

 しかし、近年はその前途が危ぶまれ、厳しい結果に甘んじています。
 それは、皮肉にも経済成長によって豊かになり、大学への進学率が高くなり、手に職をつける技能労働者、職人への道を選ぶ若者達が少なくなったからです。
 このことは、世界大会の出場資格が22才までということと深く関係して、日本選手はこの年齢ではまだ充分な熟練工は数少なく、育っていないのが現状です。
 その為、約40種目の代表選手は、各業界・各組合から選ばれ、その指導者の皆さんが、特訓に特訓を重ねて、競技大会に間に合わせているのが実態のようです。
 最近の傾向として、韓国の台頭が著しく、おそらくこれに中国が参加すると、更に日本選手の立場は厳しくなることは避けられないと思われます。

 科学技術(コンピューター化・ロボット化)の著しい進歩によって、技能が関わる部分が減少して、一見技能がおろそかにされているのではないかと思うのは私だけでしょうか。 
 いや、それどころか、技能が基礎になっているからこそ、技術の発展があるのであって、この「技能五輪」を契機として、「技の国・日本」をもう一度見直すべき絶好のチャンスと思うのです。

 そして、その現実から、例えばドイツのような「マイスター制度」を参考にして、「日本型のマイスター制度」を確立すれば良いと考えます。ドイツをはじめヨーロッパなどでは、人の出来ない「技能や技術」を持っている人は、社会の誰からも「尊重される」と言います。
 中学を卒業する頃に、進学の道を選ぶか、それとも、例えば「楽器」をつくる職人の道へ進み、夢を実現するかを選択します。
 進学しないことを軽べつされるどころか、信念を貫くことは高く評価されます。
 むしろ、自らが進路を決められないことへの批判を受けることになります。

 日本では現在、一部とは思いますが、大学を卒業する頃になっても、自らの生き方どころか、何になるかを決められない青年が多いと聞きます。
 どんな職業でも、社会が必要とする以上、立派な仕事であります。その道を極めることは、すべての生き方に通ずる「真理」に到達するはずです。
 私は、この技能五輪が静岡県で開催されることをキッカケとして、技能の質を高めると共に、職人の地位の向上を目指すべきだと考えます。

 次に、視点を少し替え、技能五輪を考察してみたいと思います。
昨年、スイスで行われた大会では、30万人の観光客が訪れたと言われています。大会関係者、選手の家族、業界の指導者、技能器機メーカー、そして、これを契機としての観光客がそれです。
 北に麗峰富士山を仰ぎ、南に伊豆の温泉を控え、しかも「ふじのくに空港」が開港していたとしたら、県東部地域は大変な賑わいが予想されます。
 私もお手伝いしている「GINOH21JAPANプロジェクト」は、技能五輪の競技大会をプロデュースするだけではなく、一過性の官(厚生労働省・県・市)主導型だけではなく、終了した後を視野に入れた「地域おこし・産業おこし」とするために、「民活型」を加え、「官・民一体の技能五輪」にすべきと提言しています。
 そのためには、県東部の企業・団体が結束して、知恵を出し、汗をかき、その為の努力を惜しんではならないと思います。
 すでに政策提言グループであり、数々の実績のあるサンフロント21協議会が、今年度事業として取り組んで頂いておりますが、さらに力強く推進する為、沼津市・富士市を中心とした関係団体の推進協議会を一日も早く発足したいものです。