「私の趣味…それは映画」
2005.05.02

 私は青年の頃から、青年団やボーイスカウト、子供会、そして、消防団と社会奉仕に明け暮れていました。
 家も余裕がなかったので、お金のかかる趣味は持てませんでした。
 ですから、今でもゴルフもマージャンもパチンコも出来ない、付き合いの悪い半端者です。

 その半面、スポーツ・読書をはじめ、音楽・演劇・落語・芸能の観劇・鑑賞など、アート系の趣味には広く興味があります。
 まあ「下手なヨコ好き」「好奇心のかたまり」で、何でもちょっかいを出す方なのです。

 その中でも、映画鑑賞が私の生活の一部になっています。
 たまたま私の友人で、静岡市の由緒あるお寺の住職がおりまして、何と、このお寺でサールナートホールという文化施設を持っていて、彼が館長も兼ねています。
 http://sarnath.co.jp/gaiyou.html

 静岡の地に、東京の文化の輸入ではない"オリジナルな文化を芽生えさせる場にしたい"、 最近の世の中、ナゼか生きているコトに真剣味がない風潮から"生命を感ずる場"を提供したい、と二つの理想を抱いて建設したそうです。

 演劇・落語・コンサート・講演など、約300席のホールがあり、その他に研修室や茶室があり、一番のメインは映画館が2ホールあって、毎日4本の名作を上映しています。
 私はそこの会員であり、モニターのような役割をしていて、時々館長に感想を述べたり、僭越ながら提言をさせていただいたりしています。

 そもそも、私の映画好きは子供の頃にさかのぼります。その当時、週2〜3本は映画を映画館で観ていたものでした。
 お金のない子供時代でしたのにナゼでしょう。
 その種あかしは、実は家業が看板屋で、親父が映画館の看板(似顔絵)を描いていたので、2館はタダで入れたのです。

 当時、映画は全盛の時代で、富士宮にはナント7館(各映画会社の配給館と洋画専門館が1館)もの映画館がありまして、正に娯楽の王様でした。
 今思うと、当時の方が文化的な環境が整っていたように思います。

 残念ですが現在は1館もありません。
 将来は、サールナートホールに協力していただいて、富士宮で映画が上映出来るようにしたいと思っています。
 今のこどもたちに、自分が体験できた、文化的な環境を整えるお手伝いができればなと。

 話を戻しますが、サールナートホールでは、一般の映画館とは異なった視点、前述の二つの理想に基づき、厳選した作品を上映します。
 アカデミー受賞作品などの世界の名画、成長著しいアジア映画、時には日本映画でも懐かしの名作などなど。
 特に、子供や動物が主役の感動作は、私の心を掴んで離しません。

 人間とはこんなに美しく、たくましく生きることが出来る、たとえ現実では難しいかも知れないけれど・・・。
 人の心の清らかさ、美しさ、そして大らかさ、その時代と共に生きた生きざまや自然との語らいと安らぎ・・・。
 今まで、どれだけ映画に涙し、感動し、励まされたか知れません。

 実は、このサールナートの質の高い映画鑑賞を継続出来る、その支えは約3,000人の会員の方々です。
 年間の会費を支払い、そして1回1,000円で良い映画が観られる、趣旨を理解した方々が広がれば広がるほど、私たちにより良い作品を観せてくれるのです。

 これは、富士山に例えると、高さと裾野の広さが示しているように、質が高ければ高いほど、それを支える土台・基礎の広さ、強さが必要なのだと思います。

 日本映画が一部の演出家やスターを除き低調なのは、売れるモノばかりを発信する側、売れたモノばかりを求める側の環境によって、良い映画を育てる日本人の意識が低くなつてしまっているのではと、考えてしまいます。

 「冬のソナタ」が当たれば、次から次へとその情報ばかり、マスコミや流行に踊らされていまっているのでは。流行っているからではなく、良質なモノを求める気持ちを忘れずにいてほしいのです。また、その良質なモノをはぐくむ気持ちを忘れずにいてほしいのです。

 邦画にだって、監督や製作者が良い映画をつくったら、それをみんなで支える土壌があれば、それに次ぐ人が必ず現れることを私は信じたい。いや、信じています。

 20世紀最大の進歩は映像の世界と言われていますね。
21世紀はますます情報発進と量と質が問われる時代になり、複雑になるのでは・・。
 
 しかし、その選択は選ぶ側の私達にあることを、決して忘れてはならないと思います。

                                  秋鹿 博