「若さのチカラ」
2005.03.14

 私の知人(市民劇場事務局長)より、高校生の演劇愛好家で創っている校境劇団「UNIVERSE」のことを紹介され、協力してやってほしいとの依頼を受けました。
 お話を聞いて、大変関心と興味を持ちました。

 富士地域の演劇好きな高校生が、学校の枠を超えて劇団を創り、活動しているとのこと。団員は16人。脚本からスタッフ・キャスト・大道具・小道具に至るまで、みんな自分たちでやっているとのことでした。

 その時に数日後に行われる、第2回目の公演予定の手作りのチラシをもらいました。そこで、早速3月12日(土)午後6時より、富士市の勤労福祉センター「ラ・ホール」に行ってみました。

 会場に入ると、仲間の高校生、家族と思われる中高年の人、演劇ファンの人など、約200人位が集まり、幕が上がるのを待っていました。
 その場は、公演といった緊張感はなく、素人の発表会らしく、案内も肉声で、家族的で和やかな雰囲気でした。

 ところが私の予想に反して、出し物のテーマ、団員の演技、セリフ回しと間、とすべてにおいてとても高校生とは思えない立派な内容の創作劇でした。演劇に取り組む真面目でしっかりとした姿勢が、はっきり感じさせる出来ばえで、高校生が大きく見えました。

 一番感心したのは、みんなで考えて創ったシナリオ。
 内容は、ざっと次のようなものでした。

 一人暮らしのおばあちゃんが、インターネットで家族を募集したところ、父親役、母親役、子供役が一人ひとりバラバラに家に帰ってくるという想定。
 約束ごとで、入ってくるときは必ず「ただいま」と言って入ってくる。
  先にいる人たちは、「お帰りなさい」と声をかけ、家族が揃ったところで世間話など団欒が始まります。
 そこへ借金取りが来たり、近所の八百屋さんが来たり、子供役の女の子の親が探しに来たりして大騒ぎ。
 
それぞれの家族の役割を演じながら、元の本人の本音になったり、とにかく広くない舞台をところ狭しとみんなで飛んであるく。とにかく元気がいい。
 訴えたいことは、家族だから素直に相談したり、甘えたり出来る時もあるけど、逆に、家族だから意地を張って本音を言えない時、言えないこともある。

 と、今、崩壊しつつある日本の家族のあり方をテーマにして、その絆の大切さを、大人が考えている家族観ではなく、「高校生から見た、感じている家族像」探しを高校生なりに表現し、描いていて、その迫真の演技が、会場の人達の心をとらえて離しませんでした。

 私も大人が一方的に「若者たち」をイメージしてしまうのではなく、一人ひとりの個性を「個人として尊重」して見るようにしなければならない、と改めて教えられたひとときでした。

 これからも温かい気持ちで、少しでも、この「若者たち」による演劇のように、「一人ひとりの個性」と「その個性の集まった集団」を活かせる環境づくりについて、出来ることは支援して行きたいと痛切に感じました。

                                                                秋鹿 博